私は2004年に、それまでのインドとの業務経験を活かし、インドビジネスサポートする会社を設立しました。その当時からこれからはインドと言われたものでしたが、日印間のビジネスの深化はゆっくりとしたものでしかありませんでした。
ジェトロの調査ではインドに拠点を置く日本企業数は2005年に357社でしたが、16年後の2021年になっても1,439社にとどまっています。一方中国は、2019年で32,887社(外務省「海外進出日系企業拠点数調査(2019年調査結果)」)に達しています。私の感じでは、日本企業にとっては東南アジアまでは親近感を持つのに対して、ミャンマーの先の南アジアになると急にハードルが上がるようです。
ところが、今回のインドへの注目の高まりは本物のように感じます。それは米中対立に伴い、インドが投資や製造業の移転先として注目を浴びているからです。例えばJPモルガンは、2年以内に世界のiPhone生産の4分の1をインドが担うとみていますし、米マイクロン・テクノロジーは、インドに半導体工場を設立するために少なくとも10億ドルを投じる計画です。
米中対立の影響以外にもインドには世界最大の人口、英語のできる安価な労働力、及び多くの優秀なIT人材の存在、加えて2017年に始まったインドの「人口ボーナス期」が2030年前半まで続くとみられていること、外資規制の緩和を進めるモディ政権の存在などの好条件が揃っています。
こうしたことから、モルガン・スタンレーは、2030年までにはインドの経済と株式市場の規模は世界第3位になると予想しています。
しかもインドは世界最大の民主主義国家で、我が国と基本的価値観を共有する国です。さらにインド人は基本的に親日で、日本製品が好きという付き合いやすさもあります。
ただGDPに占める製造業の割合は中国は26%に対してインドは15%程度と低く、高い付加価値を生み出す「製造業」の発展がインドの成長のカギとなっており、モディ首相も「メイク・イン・インディア」をかかげ、それを後押ししています。
この製造業振興の政策は、日本にとって大きなチャンスともなるもので、つい最近も(2023年7/4~7)、菅前首相が日本企業幹部100人以上とともに訪印し、モディ首相とも経済関係拡大について話し合っています。
このように、可能性と将来性を秘めたインドの活用を日本企業は真剣に考え始めています。ただしインドでのビジネスには、以下のような注意しておくべき事はありますので、その対応が必要です。
〈インドでのビジネスで注意しておくべきこと〉
(1)電力や交通などインフラ整備が十分でないこと
(2)税制が複雑かつ曖昧なこと
(3)通関の手続きをはじめ役所での手続きに時間と手間がかかること
(4)インド人はコスパ重視であるため、日本製品にありがちな不要な機能は省き、価格を抑えること
(5)インド人は自己主張が強く、あうんの呼吸は通用しないため、しっかり話し合いに時間をかけること
基本的に想定外のことばかりで、予定通りに進まないのがインドです。しかし、それを上回る機会と可能性があるのもインドです。インドでのビジネスではインド的な曖昧さを受け入れ、臨機応変に対応することが大切です。
《筆者のプロフィール》
福岡生まれ、製鉄会社時代にインドと関わる。2004年からは福岡にインドビジネスサポートを行なう会社を設立し、現在に至る(http://www.indjpn.com 2022年8月に有限会社から個人事業に移行)。
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